「なにかって?」

「アキが、無茶した理由。何をして、あんなに体調を崩したのか、知ってるんでしょ?」


あたしはリドを睨みつける。

けれどリドは面白そうに口元を歪めるだけで、肝心なことは何も言わない。


「あいつがあんたに何も言わないってことは、あんたは知らない方がいいってあいつが考えたってことじゃねーの?」


それは、そうかもしれない。

アキはあたしを危険な目には合わせない。絶対に。

だからきっと、危険なことほどあたしに隠すんだ。


だけどそれは、アキが危険だということでもある。


「オレは言わねーよ。知りたいならあいつに聞きな」


リドはあたしの頭をポンポンと撫で付けた。

それはまるで子供扱いされているようにも感じられた。

なんだかリドが微笑んでいるようにも感じられたから。


「なんで、リドまでアキの味方をするの」

「言っただろ?オレもあいつも、佐奈を危険な目に合わせたくねーの」


それよりさ、とリドは話を変えた。


「佐奈、急いでるんじゃないの?」


そう言われてハッと思い出す。


「そうだった!」


時計を見ると、出発しなければいけない時間の3分前。

血の気が引いていくのと同時に、あたしはバタバタと走り回るように急いで準備を始めた。


「おはよ、佐奈。朝からとことんうるさいね」

「アキ!おはよう!」


不機嫌な顔のアキは眠そうだ。

どうやらあたしが起こしてしまったらしい。