「ていうか、あんたはここから出られないんじゃなかったの?」

睨みつけると、リドは「そうだったっけ」ととぼける。


「とにかく、アキにちょっかい出すのはやめてよね!」


あたしは強調した。こいつにも強めに言っておかないと通じない。


「へえ、あいつ、どうかしたの?」

「熱が出てるの」

「ふーん」


同居人に対してなんの関心もないのか、こいつ。

血も涙もない鬼か!と言いかけたけど、そうだよ、こいつは悪魔だったと思い出す。


「まあ、体調悪いのは知ってたけどな」


呟かれた言葉にあたしは耳を疑った。


「は?なんで?」


なんで知ってるの。

アキが倒れるまで、あたし気づかなかったんだよ?

アキは倒れるまで、普段と同じように振る舞っていたんだよ?

それを気づいたの?あんたが?


「分からねーんだ?」

リドは愉快そうに口元を歪めた。


「あいつからは何も聞かされてねーの?」

「…アキは何も言ってない」


ふーん、とリドはそれだけ言った。まるで嘲るような言い方だった。

リドは、絶対何か知ってる。

その確信が胸の中に生まれた。


「リド、あんた何か知ってるよね?」