「…探しに行こうかな」

「いやいや、やめときなって」

慌ててリドが止める。


「考えてみろよ、もう夜だぞ。佐奈が行く方がずっとキケンだ」

「でも!」

「それに」

食い下がろうとしたあたしをリドが遮る。

「佐奈がこんなキケンな時間に探しに行ったら、あいつはきっと怒るぞ」

確かにそれはそうかもしれないと思った。

アキは身内が危険な目にあうことを徹底的に避けたいタイプだ。

だからあたしが無茶をしてアキを探しに行こうとしたら怒るだろう。

「なにやってんの」って、自分のことを棚にあげて怒るんだ。


「佐奈はオレと契約した。そのせいで『そーゆーの』と余計に関わりやすくなってんだよ」

だから夜はキケンだ、とリドは言う。

「太陽が隠れたら、あいつかオレと一緒じゃねーと危ねえよ。巻き込まれかねない」

「巻き込まれる…って?」

「『あっちの世界』に連れていかれる、とか?」


ぶるりと寒気が全身を駆け抜けた。

リドはさらりと言うけど、内容は相当怖い。

『あっちの世界』、それはつまり、今いる『この世』ではない。

一度行ってしまったら、戻ってこれないかもしれない。


「もし連れていかれたら、あたし、死んじゃう?」


そう聞くと「そーかもな」と呑気な口調の答えが返ってきた。

呑気な口調だけど、それはきっと、肯定の意味。