「で、でも、さっくんはなんとも思ってないかもしれないし、なんていうか、その…」

真っ赤な顔のお姉ちゃんは視線を逸らしながらそんな言葉を口にする。

全く、現実がちゃんと見えてるのだろうか、この人は。

あの2人がうまくいかないわけがないのに。


「大丈夫だよ、お姉ちゃんなら」

あたしはとびきりの笑顔でそう言った。


お姉ちゃんと、朔兄。

生まれてから今までの、途方もない時間。

それをともに過ごしてきた、二人の関係性。

それをどうやって考えても、あの二人がうまくいかないはずがないんだ。


むしろうまくいってくれないと困る。


お姉ちゃんには朔兄しかいないし、朔兄にもきっとお姉ちゃんしかいない。

お互いを幸せにできるのは、お互いだけ。

唯一無二の存在なんだから。


「ありがとう」


お姉ちゃんはとびきりの笑顔であたしの頭を撫でる。


「うわ、お姉ちゃん!」


それは幼い子をあやすようでもあったし、最大限の感謝を伝えるようでもあった。


「で?佐奈は好きな人いないの?」

少し落ち着いたらしいお姉ちゃんは楽しそうな少しいじわるな笑顔でそう尋ねるが、あたしは真顔で即答した。

「いないけど?」

「ええ!?」

お姉ちゃんはすっかりがっかりしたような表情を浮かべた。

「冗談でしょ」

いや、お姉ちゃんが何を考えてるか分からないけど、女子高生全員が恋愛してると思ったら間違いだからね。

特にそういう女の子っぽい話題の場合、あたし当てはまらないときが多いんだからね。


「あっくんは?あっくんのことはどう思ってるの?」

「は?アキ?」

あたしは素っ頓狂な声を出してしまった。