「いーえ。あっくんは笑ってた方がずっと男前だしね」
アキの微笑みにウィンクしたお母さんに、あたしは感心する以外なかった。
さすがだ。
たったあれだけの言葉で、あの頑固者で複雑なアキを立て直してしまう。
きっとお母さんに励まされたら、どんな人だって元気を取り戻してしまうだろう。
…あんな風に、なれたらいいな。
自信満々に笑う母を見つめて思った。
…あたしもいつか、お母さんみたいに、誰かを助けられるようになれたらいいな。
程よく冷めたお茶をすすろうとマグを取ったときだった。
バタン、と大きな音がして玄関が開いた。
「ただいま!」
叫ぶのと同時にバタバタと入ってきたのは、我が姉だった。
「お、お姉ちゃん?」
あたしは目を見開いた。
いつものお姉ちゃんじゃなかったからだ。
いつものお姉ちゃんは、サラサラな黒髪、透き通るような白い肌、上品な微笑みを浮かべて落ち着いる、誰もが憧れるような美女なのに。
今目の前にいるお姉ちゃんは、汗にまみれて髪の毛はボサボサ、走ってきたのか息は上がり、頬は赤く染まって、上品な笑みなんて浮かべる余裕もないほどに疲れ切った表情をしている。
「佐奈!帰ってたのね!」
「あ、うん。っていうか、どうしたの?」
「実は…って、あっくん!」
お姉ちゃんはアキに気づいたのか「いいところに!」と目を輝かせる。


