あたしに何かできるなら、なんとかしてあげたかった。

それなのに、聞けなかった。


「…なんでもない」


なんだかその理由は、聞いてはいけないような気がして。

触れてはいけないような気がして。

なぜだか分からないけど、聞きたいのに、聞けなかった。


「変なの」


アキは珍しく笑う。

いつもなら「変なの」と言いながら真顔か不機嫌な表情や雰囲気を出してくるところなのに。


「変なのは、アキだよ」

「え、俺?」


予想外の答えだったのか、目をまんまるにするアキに、あたしは「そうだよ」と言った。


ごめんね、あたし、卑怯だ。

聞きたいくせに、聞けなくて。

はっきりしたことは怖くて言えなくて、言えたのはたったこれだけ。


「変じゃないし」

「変だし」

「変じゃない」

「変だってば」


「もー、二人ともいつまで子どもみたいなやりとりを続けてるのっ」


不毛な言い争いを続けていると、お茶とお菓子をお盆にのせたお母さんがやってきた。

それでお互いはっと気がついて俯く。


「変わらないわね、二人は。

背が伸びても、進学しても、心はずーっと変わらないまま」


お母さんは目を細めてあたし達を交互に見る。