「何驚いた顔をしてんだよ。俺が初めて喋ったときは何も驚かなかったくせに」

可笑しな奴だな、とそのイケメンは艶やかに笑う。

思わずクラクラしそうになるが、ハッと思い出す。

この口調、あたしをバカにするような笑い方。


「佐奈」


名前を呼ばれただけで身体が締め付けられるような感覚がする、こいつの正体は。


「あんた、まさか、リド?」


「ご名答」


あたしを半ば脅す形で契約した悪魔のリド。

でもリドは黒猫姿だったはず。なぜこんなイケメンな姿に?

首をかしげていると、「何玄関にも入らずに突っ立ってんの」と後ろから声がした。

「荷物持ったままじゃ重いでしょ、早く置きなよ」

振り返るとそこにいたのはアキだった。

「アキ、どうしよう」

「何が?」

アレ、とイケメンなリドを指さすと、アキは眉間にしわを寄せた。


「あんた、リドだね。どうしたの、その姿」


「さすがお前は力が多少はあるだけあってノーヒントでもすぐに気づいたな」


まあ、オレ様には勝てないけど?なんて、挑発的にリドは笑う。


「あんまり人間を見くびっているとそのうち痛い目見るよ。
それよりその姿どうしたのって聞いてるんだけど」


するとリドは「こっちが本来の姿なんだよ」と鼻で笑った。