「あたし、何も調べられてないや!」


やばい、美晴に怒られる!絶対怒られる!


「は?この1時間何やってたの、佐奈」


美晴に怒られると思った矢先、アキに先に怒られてしまった。


「何って、いろいろ探し回ってたら…」


怪物がでてきたんだもん、と言いたかったけどそれは胸にしまった。


「ほんと、佐奈って要領が悪いね」

「そういうアキは調べたの!?」

「あっちにあった資料は全部目を通したけど?」

「うっわー、むかつく!」


腹を立てるあたしと、クールなアキ。

対照的なあたし達の会話に、田辺くんが笑った。


「ほんと、2人は仲がいいね」


あたしたちは目を見合わせた。

いつもなら2人とも即答で「仲良くない!」と否定するところだけど、田辺くんの優しい笑顔を見ると毒が抜かれたみたいに優しい気持ちになってしまった。


「そろそろ戻らなきゃ」


アキの言葉にあたし達は頷いて、集合場所である図書館のエントランスに向かった。


怪物はアキが倒してくれた。

倒れた本棚はきっとアキかリドがどうにかしてくれた。

だけど1つ分からないままだった。


『誰が田辺くんに乗り移っていた?』