「な、んで…どうして…」
散らばる本、壊れた本棚の残骸。
一瞬で景色を変えたその怪物に、あたしは情けないことに腰を抜かしてしまった。
「なんでって、最上さんがやったんでしょ」
冷静な声が聞こえて顔を上げる。
「え…?」
「最上さんが呪文を唱えたでしょ」
その声は、田辺くんだった。
「た、なべくん?」
あたしを見下ろす田辺君に、いつもの優しさや笑顔は微塵もなかった。
「どうしたの、その目…」
穏やかなブラウンの瞳は、冷たい水色に変わっていた。
雰囲気も、何もかも、いつもの田辺くんではない。まるで、別人だ。
田辺くんの背後には、文字でできた、得体のしれない巨大な怪物。
これじゃまるで田辺くんがその怪物の仲間みたいだ。
でも、どうして。
呆然としているあたしと冷たい目の田辺くんの間に割って入ったのはリドだった。
「り、リド?」
その目は鋭かった。
「お前、もしかして…」
「佐奈!」
リドが何かいいかけたその時、走ってきたのはアキだった。
「大丈夫?」
息を切らすアキは目の前の巨大な怪物を見るや否や「こいつ、何?」と聞いてきた。


