朝のやり取りを思い出してじっと睨みつけると、アキはあたしを見下ろしながらため息を吐いた。


「俺の方が溜め息吐きたい」

「いや、もう既に吐いてますけど!」


アキが静かに突っかかってくるのを反論していると、美晴が「図書館では静かに」と人差し指を彼女の口元に当てた。


「もう、佐奈はすぐこうなるんだから」


これじゃ調べものも進まない、と美晴は肩を落とす。

ちなみに調べものの班はアキと美晴と一緒だ。


「え、待ってよ美晴、あたしが悪いの!?原因はアキなんだけど!?」

「だから佐奈うるさい」

「アキは黙って!」

やいやい言い合っていると、「本当に仲がいいね」ともう一人のメンバー、田辺(たなべ)くんが穏やかに微笑んでいた。


「田辺君!」


慌てて駆け寄ると、「やあ」と優しく声をかけてくれた。

田辺くんは成績優秀だが誰に対しても優しくて穏やかで、一言でいうならば『いい人』。うちのクラスの癒しだ。


美晴も駆け寄って、「ごめんなさいね」と眉を下げて謝る。

「佐奈が騒がしくて」

「美晴さん、やっぱりあたしなの!?あたしが悪いの!?」

「いや、にぎやかでいいよ」

「田辺くん!そこは否定してほしかったな!」