「で、今回の原因は何?」

美晴がそう尋ねるのであたしは仕方なく答えた。


「……目玉焼き」

「は?」


美晴は目を点にした。


「目玉焼きは絶対醤油なの!それなのにアキが塩だって譲らないの!それどころかそれを強要してくるの!」

「いや、普通に塩でしょ。何なの醤油って」

「ありえない!醤油に決まってるでしょ!」

「ていうか!」とあたしは終わらない話題に終止符を打つ。

「別に何でもいいんだよ!目玉焼きにソースかけようが、塩かけようが、醤油かけようが、何だっていいよ、それは個人の自由だよ。だけど人に何をかけるのかを聞かずに、さも塩が多数派であるかのように、なんで全部の目玉焼きに塩をかけるの!?なんで他人にまで強制するの!?」


「この人でなし」とののしると、アキはフイッと顔をそむけた。

こっちが意見を述べても見てくれないときのアキは十中八九「面倒くさいな」と思っている。

つまりこういう面倒なことと関わりたくありません、という意思表示だ。

それに気づいたあたしはさらに苛立って「こっち見てよ!」と怒鳴った。


するとアキは眉間にしわを寄せて渋々こっちを向くと、一言こう言った。


「……佐奈、朝からうるさい」


ドッカーン。

言葉にするならそんな言葉だ。

あたしの怒りが爆発する音。


「誰のせいでこんなにうるさく怒鳴ってると思ってるの!」

「え、俺なの?」

キョトンとするアキ。なぜあたしの怒りの自分なのかわかっていない様子で自分を指さしている。

「それ以外の理由なんてないでしょうが、鈍感か!」

「佐奈が勝手に怒ってるだけじゃないの?」


む か つ く !