するとその時教室の扉がガラリと開いて、誰かが入ってきたようだった。

顔だけをそちらに向けると、それは今顔も見たくないほど大っ嫌いなひとだった。


「げっ」


目があった瞬間、勝手に出たのはあたしの声。

顔の向きを戻して、そちらを見ないようにした。


「『げっ』て何」


ため息混じりのそいつはいつもより少しムスッとしていた。


「それはこっちのセリフなんだけど」


それからそいつはあたしの左隣の自席に座った。


「あなた達また喧嘩してるの?」


美晴は呆れたように言う。


「喧嘩じゃない。佐奈が勝手に怒ってるだけ」

「はいはい、そういうと思った。だけどあなただって怒ってるでしょう、晃」


そいつ_アキは美晴の言葉を肯定も否定もせず、ただ不機嫌な様子で頬杖をついた。


その様子を見た美晴はぷっと吹き出して、「本当に、あなた達は」と笑った。


「仲いいわね」

「どこが!?」

あたしは大声で反論して、アキは長い溜息を吐いて否定する。

喧嘩中の2人に言うべき言葉とはかけ離れている。