痛そうだと顔を歪めてくれた。心優しい親友だ。

「ああ、うん。大丈夫だよ」

出血はいつの間にか止まっていた。まだ立ち上がれないけれど、きっと治るだろう。

「何してそんな怪我したのよ!」

あたしは言葉に詰まった。

さすがに、俺様悪魔のリドの部下であるファルに攻撃されたなんて、田辺くんがいる前では口が裂けても言えないし、言ったら説明が大変だ。

アキはあたしの方を見ていた。

何を言ってごまかすんだろうと思っているに違いない。

あたしはアキをジトッと睨んで、それから一つ深呼吸すると美晴達に向き直った。



「ちょっと、転んだ」


アキはぷっと吹き出した。

美晴と田辺くんは呆気にとられたようにぽかんと口を開けて、それから焦ったように二人とも色々言ってくれた。

「転んだなんて何してるのよ!」

「転んでそんな大けがなんて大丈夫なの?」

「そんな大けがになるなんてどんな転び方したのよ!?」

「さあ?」

2人のたくさんの心配を軽く受け流すと「佐奈、ちゃんと答えなさい!」と美晴が怒った。

もう暗くなって来たし今日のところは帰ろう、とアキが提案した。

それにあたし達は賛成して、現場検証はまた後日ということになった。


夜の闇が町を包み込んでいく中、あたしはアキに背負われて、それぞれ家路に着いた。

明るい月があたし達を照らしていた。