「朔兄(さくにい)、止めないでよ」

「落ち着いてよ、佐奈ちゃん。志保(しほ)だってわざとじゃないんだから」


いや、わざとじゃなかったら何やってもいいみたいなこと言わないでもらいたいんですが。


しかし優しくて穏やかな朔兄に反抗する気にもなれなくて、あたしは言葉を飲み込んだ。


我が姉、志保お姉ちゃんは朔兄のところに駆け寄ると「さっすがさっくん」と嬉しそうに笑う。

朔兄まで嬉しそうに微笑む。


付き合っていないのにこの雰囲気。

全くもう、人目のないところでやってくれないか。


「相変わらずラブラブだな!」

「よっ夫婦!」


集まった同級生が2人に向けてそんなヤジを飛ばす。


「そんなこと言わないでよ!」

「お前らからかうな!」


同級生たちは2人がなんだかんだと言っているのを無視して「俺らジュース買ってくるわー」と校庭を出ていった。


「ったく、あいつらは…」

「いっつもあんなこと言うよね」


2人はなんだかんだと言っているようだが、あたしは内心、よく言ってくれた、と同級生達を嬉しく思っていた。


え?妹のくせにひどいやつだなあって?

まあ、確かにそうかもしれないけど、こんな暑い中に呼び出しておいてラブラブな現場を見せつけてくる姉と幼なじみに対して思うこととしては間違っていないと思う。

しかも2人とも美形で絵になるところがさらに腹が立つというか、溜め息を吐き出したくなるポイントだ。