「それに、今の校長は花じいだ。きっと入れてくれるよ」

花じい、とは小学校の花田先生のこと。あたし達が小学校の頃からいる、とにかく児童思いで優しい先生だ。

おじいちゃんみたいな優しい雰囲気とグレーの髪色から、児童はみんな愛をこめて「花じい」と呼んでいる。

「花じいなら大丈夫だね」

あたしが微笑むと、田辺くんも微笑み返してくれた。


それからあたし達は天宮小学校を目指して歩いた。


天宮町は決して都会な街じゃない。

車道と歩道が分離していない道なんていくらでもあるし、道路の左右に田んぼや畑があるところんて普通だ。

天宮高校から天宮小学校へと続く道は、道路の左右に果てしない田んぼが広がる田舎道で、車道も歩行も区切られていない一本道だ。

遠くにぽつりぽつりと昔ながらの民家が見える。

田辺くんと美晴が並んで歩くその後ろを、あたしを挟んでアキとリドが歩く。

田辺くんと美晴は話が合うらしく、到底あたしが理解できないような難しい勉強の話まで速いテンポで話していた。

盛り上がる前列とは反対に、あたし達後列には居心地の悪い沈黙が居座っていた。

アキはそっぽを向いてリドを視界に入れようとはしないし、リドはアキのことなど一切気にすることなく一人で色々と話している。

「はあ」

あたしは溜息を一つ吐いた。

「どうしてそんなに溜息を吐くんだよ。このオレが隣にいるのに」

不服そうなリドをギロッと睨みつけてあたしは答えた。

「だーから、あんたが隣にいるからこそだよって何回言わせるの、この俺様悪魔!ナルシスト!」

「はあ?オレはナルシストじゃねえよ、勘違いすんなこのアホ小娘!」

ナルシストの言葉がそんなに気に障ったのか、リドは少し怒ったように反論してきた。