今日最後の授業が終わり、終礼も済ませるとみんなで下駄箱に向かう。

「はあ…」

溜め息を吐き出すと「どうしたの?」なんて声をかけられた。


「最上さん、何かあった?」

白々しい言葉、作り込んだ表情。


「あんたのせいだよ」

思っていた言葉がついに口から溢れた。

それからギッと睨み付ける。

するとそいつ__リドは、へらりと笑って「なんのこと?」と素知らぬふりをした。

本当にむかつく。なんでリドは人を腹立たせることばかりするんだ。

「大丈夫だ、本当に何もしないから」

前を歩く田辺くんに聞かれないよう、少し低い小さな声でリドは言った。


「オレは何もしない。信じろ」


信じろ、なんてどの口が言うんだ。

誰が悪魔の言葉なんて信じると言うんだ。

何も言わずに睨んでいると、「佐奈」と遠くから声が聞こえた。


「何してるのよ、早く」


はっと顔をあげると、あたしとリド以外の3人はとっくに靴を履き替えて昇降口から出ようとしていた。


「あ、待って!」

あたしは慌てて靴を履き替えた。


「お待たせ!」

みんなのもとへ駆け寄ると、美晴は呆れたように微笑み、アキはそっぽを向き、田辺くんだけが「大丈夫だよ」と笑ってくれた。田辺くんの優しさといったらない。

「小学校に行くのはいいけれど、許可取ったの?」

美晴がみんなに尋ねる。

「一応電話はしてあるよ」

答えたのはやっぱり田辺くんだった。