「アキが無茶をするのは、昔から佐奈のためでしょう?佐奈に笑顔でいてほしいからでしょう? だったらその佐奈が笑顔でいないでどうするのよ」

美晴は、いつもクールだ。あたしに対してあたりが強いときだってある。

だけどそれだけじゃなくて。

本当は、とても優しくて暖かい。


例えるならそう、美しく晴れた空で輝く太陽のように。


「晃ならきっと大丈夫。心配なのは私も同じだけど、でも晃は1人じゃない」

ぎゅっと手をつないだ美晴の手のひらから伝わる体温が、凍えそうな心を優しく包み込む。


「晃のこと、大丈夫だって信じましょう?」

「…うん!」


いくつも重ねられた、優しくて心強い美晴の言葉があたしに勇気をくれる。

あたしが笑うと、美晴もふっと笑った。


するとちょうどその時、ガラガラと教室のドアが開く。

はっと目をやると、そこにあったのはアキの姿だった。


「アキ!」


思わずその名を呼ぶ。

アキは驚いたようにあたしに目を向けると眉間にしわを寄せた。


「…佐奈、朝からうるさい」


朝だといつもより割り増しで不機嫌になるアキ。

どうやらさっきの呼び声はアキの気に障ったらしい。


「まあまあ」

険悪ムードに陥りそうなあたし達の間に美晴が入って緩和する。


「佐奈、心配してたのよ?晃がなかなか来ないから」


アキはちろりと視線をあたしに寄越した。顔は不機嫌なままだ。