離れを出て実家に戻ると、案の定お姉ちゃんの様子はおかしかった。

「お、おおおお、お帰り!」

真っ赤な顔であたしに対しておどおどしている。視線すらまともに合わせない。

まあ、大体理由は分かるけど。

「ただいま。まあ、昨日も会ったけどね」

昨日、という単語を口にした途端、お姉ちゃんの顔はさらに赤に染まる。

…分かりやすいと言ったらない。


「あ、あの、その、あ、あのね!」


お姉ちゃんは俯いてもごもごと言葉を詰まらせる。

身内にまで、それも妹のあたしにまでこんなに恥ずかしがるなんて。昨日、朔兄にもこんな風に聞いたのだろうか。


「朔兄に聞けた?」


なかなか言い出さない姉に呆れてあたしは少し笑った。

こくり、とお姉ちゃんは頷いた。

全く、手のかかる姉だ。


「さっくんが、その…す、好きって、い、言ってくれた、の」


ただの報告を、こんなにも照れて顔を赤くする恥ずかしがりもそうそういないだろう。

ほんと鈍感で忘れっぽい上に恥ずかしがり屋だけど、私にとっては世界でたった1人の姉。

世界でいちばん憧れる、大好きな姉。


「よかったね」


ふわりと花が開くように、頬を赤らめてお姉ちゃんは微笑む。


__もし朔兄がお姉ちゃんのことを幸せにしなかったら、あたしは一生朔兄を許さない。