するとアキが「佐奈」と呼んだ。

「ごはん、作ろう」

「え、でも」

「今日の晩ご飯当番は佐奈だよ、忘れたの?しかもその当番を俺が手伝ってあげようとまで言ってるのに」

なに、俺に全部押し付ける気?

アキの無言の圧力に耐えられなくなって、あたしは「すぐ行きます」と返事した。

「リド、後で教えてよね」

あたしは釘をさすようにそう言い残してリドのもとを去った。

リドはうんとも嫌だとも何も言わなかった。

リドらしくない、と強く思った。

だけどどうしてリドがそんな態度をとるのかまではあたしには想像すらできなかった。







台所に移動すると、ニンジンの皮をむいて、とアキから指示が出た。

何を作るのかと聞いているんだけど、アキは黙々と茄子を2cmのぶつ切りにしている。


「アキ?」

「……」


集中しているのか、あたしの声は一切聞こえていないらしい。


「ねえ、アキってば」

「……」


あたしとアキとリドの3人分を作る予定なのに、一体どれだけの茄子を使う気なのだろう。

黙々と切り続け、2本は切り終わろうとしている。

煮物でも作る気か?


「晃さん?」

「……」


「アキ!」


アキが4本目の茄子を手にしたところであたしは叫ぶように名前を呼んだ。

アキはびくりと肩を上げて静かに驚いた。


「…なに」

「なに、じゃないでしょ!一体どれだけの茄子を食べるつもり!?」

そこで初めてアキはハッと自分の手元を見渡すと目を見開いた。