目を覚ますと、視界一杯に白色が広がっていた。

どうやらあたしはベッドに横になっているようで、辺りを見渡せば優しい薄桃色のカーテンで囲まれている。

「ここは…」

どこだ、と思ったけれど、そのカーテンに見覚えがあった。ここはどうやら保健室のようだ。

どうしてあたしはここにいるのだろう。

階段を落ちてから今までの記憶がない。その間に誰かが運んでくれたのか、それとも…。

ああ、だめだ。もう分からない。

はあ、とため息を吐いたら、穏やかなな静けさがあたしを包み込んだ。

落ち着いている雰囲気はまるでさっきまでのことがすべて夢のようにさえ感じられた。

そうだ、あれも全部夢だったのだろう。

あたしは眠っていたのだろう。

だって、そうだ。あんな怪奇現象が2度も起こるはずがない。


「佐奈、起きた?」


カーテン越しにアキの声が聞こえる。


「あ、アキ?!」


まさかの人物に、あたしは驚いてしまった。

入るよ、と一言断って、桃色のカーテンが揺れるのと同時にアキが姿を現した。

慌てて体を起こそうとすると、体中が痛んで顔が歪む。

その痛みがさっきまでのことが夢じゃないと雄弁に語っていた。


「寝てなきゃだめだよ!」


アキが怒鳴るようにあたしを寝かしつける。


「…よかった」


無事でいてくれて。

アキはほっと安堵したような顔をした。基本的に無表情なアキだから、その表情もほとんど変わらないけれどあたしには分かった。