「あーまあ、大変そうだよね」


アキは棒読みで頷いた。美晴のみならずアキまでもが他人事みたいなことを言う。どうしてあたしの周りはドライな性格の人物が多いんだろう。


「まあ、佐奈が相手にしなければいい話でしょ。周りの女子も佐奈がどういう性格か分かってるだろうし」


アキは来た道を引き返してポケットに手を突っ込みながら、ため息交じりにそう言った。


「また簡単そうに言う」


アキは女子の怖さを理解していないんだ。絶対に。


「佐奈なら大丈夫」


「大丈夫じゃなかったらどうするの」


あたしがすねるように口をとがらせてそう尋ねるとアキは言った。


「俺が助ける」


まっすぐな目は前を見据えていた。

それは調子のよい冗談のように聞こえてしまうけど、これは本当だ。本当に、助けるつもりだ。

どこまでもまっすぐな視線が、言葉が、まるで矢のように胸に刺さってとれない。

だから変に心臓は跳ねて、胸が痛い。


「それに、美晴もいる」


だからひとりにならないよ、と言われているような気がした。


「それなら、安心だ」


あたしが言うとアキは小さく笑った。