「まあ、暇だったんだよ」


あたしに近づけていた顔を遠ざけながらリドはそう言葉を続けた。


「ひとりきりでずーっとあの殺風景な家にいてもやることねえし、お前らがいねーからつまんねえし」


だから暇つぶしにここに来たのだと、リドは言った。


「なにそれ。厄介事でも引き起こす気?生徒を巻き込むつもりなの?」


あたしが少し怒りながら詰め寄ると、「んな怖い顔すんなよ」とリドは笑った。


「オレは楽しむためにここにいるだけだ」


それ、答えになってないじゃん。

そう思っていると、チャイムが鳴り響いた。まずい、授業が始まってしまう。

鳴り響くチャイムの中で、リドはニヒルに笑いながら、こう言った。


「そのために誰が巻き込まれようが、オレには関係ねーんだよ」


やっぱり、リドは大嫌いだ。


「まあ、よろしく頼むよ。最上佐奈」



その微笑みは、悪意があるようで、あざ笑うかのようで、非常に憎たらしい。だけど、どこか子どもっぽくて、まるでいたずらっ子のようでもある。

例えるなら、そう。

新しいオモチャを見つけたような、新たな遊びを教えられたような、そんなわくわく顔だ。