「最上さんって可愛らしいし、元気だし、すごく魅力的だよね。思わず目で追ってしまうな」

さっきまで黄色い悲鳴をあげていた女の子達が、目を見開いて驚きを露にする。本当に悲鳴をあげる者もいれば、絶句する者もいたり、険しい顔と鋭い目であたしを睨む者までいた。とんだとばっちりだ。あたしは無罪だ。


「あら、佐奈、モテ期到来?」

「全然望んでいないし、あいつにはモテたくないな」


目を細めてニヤリと笑う美晴にあたしは溜め息を吐いた。完全に楽しんでるよ、この人。


「他人事だと思って。薄情な」

「だって他人事だもの」


ちろりと恨めしく睨めば、当然のことを言うみたいにあっさりとそんなことを言う。全く、美晴らしい。

というか、なんであいつはそんなことを言ったんだ。本当ははそんなこと、1ミリだって思ってないくせに。一体何を企んでいる?何をしでかすつもり?

睨みつけるように彼を見ていると、「あ、そうだ」と思いついたように彼はあたしの方を見た。


「ちょっと学校を案内してよ」

「は!?」


あたしの返事なんで待たずに、彼はあたしの腕を掴むと人混みの中をかき分けて廊下に出た。

後ろから悲鳴のような女の子の声がいくつも聞こえてくる。けれど、どうか誤解はしないでほしい。こんな事態になったのはすべてがコイツのせいで、あたしは何もしていない。