終着点が見えている階段が、長い。


駆け下りても駆け下りても、まだ先がある。



イヌワシはすでに、いちばん下の漆黒の扉のそばにいる。


ぼくだけが、いつまで経っても、階段を下り切れない。



どうして? 拒絶されているのか?



懐中時計を取り出す。


暗転は、すでに三百十五度。


あと四十五度で、時間切れになってしまう。



【リアさん】



願いを込めて呼び掛ける。


階段全体が震えたように感じた。


返事をしてくれた。そんな気がして、ぼくは再び呼び掛ける。


【リアさん!】



唐突に、ぼくの目の前にピンク色の霧が立ちこめた。


驚いて足を止める。


霧がぼくに覆いかぶさってきた。