またショーケースの様相が変わった。
小さな刷毛《はけ》や細いペンが丁寧に並べられている。
その正体が、最初はわからなかった。
「メイク道具ですか?」
「海ちゃん、何で疑問形?」
「あまり見る機会がありませんから」
「そういやそっか。大都高校って男子校だし、親元離れてるし、自供を信じるなら、彼女もいないわけだし」
煥くんがフォローを入れてくれた。
「オレもわからなかったぞ。ファンデーション? のコンパクトを見て、やっとわかった」
「あっきーもそんなもんか~。ま、鈴蘭ちゃんは化粧してないしね」
「どうしてそこで鈴蘭の名前が出てくる?」
煥くんは心底不思議そうだ。
鈴蘭さんの恋路は、きっと険しくて長い。



