扉をくぐると、薄暗い螺旋《らせん》階段が下へと伸びていた。


くすんだ色をした空間だ。セピア色と呼ぶには、少し色味が強い。



螺旋階段の手すりの外側には、ガラスのショーケースが、延々とはるか下まで並べられている。


埃を被ったそれらの中身は、女児向けの玩具の着せ替え人形だ。



階段に足を踏み出そうとした理仁《りひと》くんを、煥《あきら》くんが止めた。



「オレが先に行く。あんたはまだ足下がおぼつかないだろ」


「落ちても、あっきーが助けてくれるって? イケメンだね~」



おどけた口調は、明らかに空元気《からげんき》だ。


声がかすれている。


リアさんのあんな記憶をのぞいて、理仁くんが平然としていられるはずもない。