周辺の空気は澄んで清々しく

森林の深緑が目に染み

湖水の透明度は地下水が流れ込んでいて

かなりきれいだ。

自然が身近にあり

河村ファミリーをうらやんだ。

俺は今までの人生の大半を

学業と仕事に縛られ

こうした外界との触れ合いや

他人との付き合いは皆無と言っていいほどだ。

「佐竹さん。」

「ん?」

「友達には勿論私の上司と紹介しますけど、ファーストネームで呼んでもいいですか?」

「ファーストネーム?」

「はい。たぶん皆そうしたいと思うので、私だけがボスでは不自然です。」

「つまり俺を名前で呼び捨てか?」

「佐竹さんには違和感があるかもしれませんけど、皆は違うので。」

「仕方ない。」

「ありがとうございます。それからもう一ついいですか?」

「まだ何かあるのか?」

「私のことも名前で呼んでもらえませんか?」

「河村では違和感あるのか?」

「はい。志穂でお願いします。」

「わかった。」

「ありがとうございます。」

彼女は活き活きしていた。

きっと友達に会えるのを楽しみにしているのだろう。

ログハウスの方からバイクと車の音がした。

「来たようです。戻りましょう。」