私は、エレベーターで恋に落ちる

先のことなんか、当てにならない。

きっと、食事を共にする女性全員にそう言ってるんだろう。

そして、こんなふうに連れてくる相手は、何人もいて、私に順番が回ってくることなんかない。

そうだ。

彼が、忙しい時間をわざわざ割いて付き合ってくれてるのは、一緒に食事をしたいからではない。

ここに連れて来たのは、お詫びの為?

それなら、あり得るか。

手荒なことをしたから、ご機嫌とっておけって弁護士に言われたの?

そうかもしれない。

じゃなきゃ、彼の行動が理解できない。


それとも、最後にいい思い出にしようと思った?
どうして、いい思い出にしようなんて思うのよ。

いい思い出にしようっていう程、深く付き合ったわけじゃない。

「楽しかったな。何だか、特別な思い出になっちゃった」

「たかが、食事で?」

私は、ため息をついた。

「そう。たかが食事で」

「また、来るか?」
嬉しそうに言う。

私は、ナプキンをたたんで手元に置いた。


「理由がないでしょう?どうしてあなたが私を誘う理由があるのよ?」

彼が心配そうに私の様子をうかがう。

「食べたいとか、一緒にいると楽しいとか、そういう理由じゃダメなのか?」

「そんな理由で、こんな店に連れてくると破産しちゃいますよ?」