ここ数日のもやもやした俺の心を映し出したかのように、すっきりしない空模様だった。
灰色の厚い雲が切れ目なく続いている。
たっぷりと湿気を含んだ生暖かい風が肌を撫でる。
「アゼル。やっぱりここにいたのね」
ティーザ城の裏手にあるこの小さな丘は、俺とエレーナが剣の稽古をするお決まりの場所だった。
濃紺のドレスに身を包んだエレーナが俺の元に駆け寄ってくる。
首元には真珠のネックレス、長い髪はきちんと編み込まれ、ドレスと同色の髪飾りで彩られていた。
「今日はずいぶんとお洒落をしていますね」
茶化すようにそう言った俺にエレーナはぷうと頬を膨らませた。
「私だって、好きで似合わないドレスを着ているわけじゃないわよ。 何だか最近お客様が多いんだもの」
ランス公は宣言通り、着々とエレーナ王女派の人間を増やそうとしているらしい。 このところ、入れ替わり立ち替りに貴族達がエレーナの元を訪れていた。
「クスクス。 ドレスはとても似合っていますよ」
ただーーそう言って、俺はエレーナの胸元に手を伸ばす。
「これは違うものに変えた方がいいのでは?」
エレーナのドレスの胸元を飾るブローチを指で弾くと、青いガラス玉がいかにも安っぽい音を立てる。
美しい光沢ある生地と繊細なレースで仕立てられた上質なドレスからは明らかに浮いている。
「いいの、これは。私のお気に入りなんだから」
エレーナは二年も前に買ったおもちゃのブローチをそっと握り締めた。
値段から考えてすぐに壊れるだろうと思っていたのだが、エレーナが丁寧に扱っているせいか買った時とさほど変わらない状態を維持している。
灰色の厚い雲が切れ目なく続いている。
たっぷりと湿気を含んだ生暖かい風が肌を撫でる。
「アゼル。やっぱりここにいたのね」
ティーザ城の裏手にあるこの小さな丘は、俺とエレーナが剣の稽古をするお決まりの場所だった。
濃紺のドレスに身を包んだエレーナが俺の元に駆け寄ってくる。
首元には真珠のネックレス、長い髪はきちんと編み込まれ、ドレスと同色の髪飾りで彩られていた。
「今日はずいぶんとお洒落をしていますね」
茶化すようにそう言った俺にエレーナはぷうと頬を膨らませた。
「私だって、好きで似合わないドレスを着ているわけじゃないわよ。 何だか最近お客様が多いんだもの」
ランス公は宣言通り、着々とエレーナ王女派の人間を増やそうとしているらしい。 このところ、入れ替わり立ち替りに貴族達がエレーナの元を訪れていた。
「クスクス。 ドレスはとても似合っていますよ」
ただーーそう言って、俺はエレーナの胸元に手を伸ばす。
「これは違うものに変えた方がいいのでは?」
エレーナのドレスの胸元を飾るブローチを指で弾くと、青いガラス玉がいかにも安っぽい音を立てる。
美しい光沢ある生地と繊細なレースで仕立てられた上質なドレスからは明らかに浮いている。
「いいの、これは。私のお気に入りなんだから」
エレーナは二年も前に買ったおもちゃのブローチをそっと握り締めた。
値段から考えてすぐに壊れるだろうと思っていたのだが、エレーナが丁寧に扱っているせいか買った時とさほど変わらない状態を維持している。



