役立たず姫の一生〜永遠の誓いを貴女に〜

「これは、これは、ランス公爵。ご無沙汰しております」

顔を合わせるのは本当に久しぶりだが、記憶の中にある彼と目の前の人物はあまり変わってはいなかった。

俺は最上の礼で、彼に頭を下げる。
ランス公爵家は五代公爵家の一つで、王家に継いで位の高い貴族なのだ。


「あぁ、三男坊のアゼルか。久しいな。
相変わらず男にしておくのがもったいないような美貌だが・・・放蕩息子の名は返上したようだな」

「いえ、相変わらずの穀潰しですよ」

「謙遜は要らん。 カイルに匹敵するほどに剣の腕を上げたという噂は聞き及んでいるぞ」


ランス公は長年、王軍の総指揮官を務めた生粋の軍人だったが、数年前に弟にその地位を譲った。
現在は文官として、中央の要職に就いている。

本来であれば俺なんかが気軽に口を聞いていい相手では無いのだが、彼は父の古い友人でもある。
俺たち兄弟が幼い頃、剣の稽古をつけてくれたこともあった。

どんなに努力しても超えられないであろう圧倒的な才能を見せつけ、俺を稽古嫌いにした張本人だ。


「今日は、父上に?」

察しはついているが、遠路はるばる来訪した目的に水を向けてみた。

「いや、エレーナ殿下に会いに来た」

ランス公は誤魔化しもせず、率直に答えた。

やはり、そうか。

ランス公爵、彼こそが反王妃派貴族の筆頭だった。