尽くしたいと思うのは、





「水瀬ちゃんがいい子なのは、みんな知ってるよ」



……な、なんですって?

あの加地さんが。わたしにだけ対応がありえない加地さんが、わたしを褒めた……?



びくびくと警戒していると、



「だから君はもっといい女になろうね」



からかうように、にやにやと笑われる。



「加地さんっ!」



名前を呼んで文句を言おうとすると、「次は重いってふられないようにね」とさらに言葉を重ねられて、わたしははくはくと唇を震わせる。

そのまま、いつの間にか食べ終えていた加地さんは申し訳なさそうにしている浅田さんを連れて、その場を立ち去った。



「……」

「くるみ、強く生きなさいよ」

「……頑張る」



残りのお弁当を急いで片づけていく。ピーマンの炒めものをもぐもぐと咀嚼しながら、自分の恋愛下手っぷりに憂鬱になるより先に加地さんに対しての苛立ちで心が占められる。



いつもいつもからかわれてばかりで、しかもそれは可愛がってもらっている感覚とは程遠い。

だめ男生産機とか、重いとか、正直すぎる。付き合ってもいない男性に面と向かって言われるのは加地さんからだけだ。



……もう、なんでわたしにだけこうなの!



「いつもにこにこ笑ってるくるみにこんな表情させるのって、きっと加地さんだけね」

「だって嫌いなの!」



きっぱりと言い捨てる。頬杖をつきながら、なんだかなぁと真由が唸る。

その様子を不思議に思っていると、わたしのお弁当が空になった。それを合図に立ち上がる。



「あんたにとって加地さんはよくも悪くも特別なのね」

「やめてー!」



頭を抱えたくなるような彼女の発言にわたしはひぃ、と細い悲鳴をあげた。



あんな人が特別なんて不吉すぎる。

相手にするには不穏すぎる最低な人。



わたしは加地さんが、大嫌いだ。