自然と肩はあがり、ぎゅっとまぶたを閉じる。すると加地さんにねぇ、と話しかけられた。
「は、はい」
「水瀬ちゃん、さ。来週行くの?」
「え?」
来週ってなんのことだろう。突然の言葉に話の流れが読めず、わたしは瞳を開ける。
「浅田に誘われてたよね」
「っ」
どうして加地さんが知っているの? 昨日言われたばかりで、まだ真由にも相談できずにいたのに。
さっきまで羞恥であげられなかった顔が、今度は気まずさからあげられない。
話しているの聞いちゃったんだ、と加地さんが言う。そういえば、浅田さんと話した直後に加地さんがやってきたんだ。
そっか、最初から知っていたんだね。知っていてもわたしの事情なんて気にならなかったから、誘ったんだ。
「浅田と出かけるの?」
「……行きません。行けるわけない」
だってわたしは、加地さん以外の人と出かけたいとは思えないから。
義理立てしてるわけじゃない。これはただのわたしのわがまま。
「そう……」
小さくこぼした彼の声色が読めない。ふっと力が抜けたようにわたしの髪から離れた彼の手が、シーツのうえにぽん、とおちた。
ぱっと顔をあげると、加地さんと目があった。
「行きなよ」
「え?」
「浅田とのデート、行ってきたらいいと思うよ」
予想もしていなかった言葉に、困惑から表情が歪む。頬が引きつり、自分でも可愛くない顔をしていることがわかるのに、戻せない。
ねぇ、どうしてそんなことを言うの。
「浅田はいいやつだしね。水瀬ちゃんのことを重いなんて言わないし、きっと楽しいよ」
「それはそうでしょうけど……」
「それに水瀬ちゃんだって、もう浅田の気持ちは知ってるんじゃない?」
わかってる。薄々感じていたけど、今回誘われた時にはさすがに確信した。
わたしの尽くしぐせをよく知る人からなんて今までになかったことだから、疑っていたけど、もう気づいているんだ。
浅田さんは、わたしを好きだって。

