「それで?」



そう言って同期兼友人の森下 真由(もりした まゆ)は、わたしにひややかな視線を投げかけた。切れ長の瞳が細められて、少しきつい印象になる。



今は昼休み。休憩室でわたしは先週の金曜日に起きた衝撃的な出来事の愚痴をこぼしている。

自分で作ったお弁当を前にして、わたしはちっとも箸が進まないというのに真由は黙々とコンビニで買ってきたうどんをすすっていた。



周りの人みんなの目を引くような強い瞳に、顎下で揃えられたショートヘア。細くてすらりとした体型の真由は綺麗系の美人。

たとえ食べているものがうどんでも、彼女が選んだだけでお洒落に見える。



それに対してわたしは、背中まである髪をハーフアップにまとめても、なにもかも小さく童顔なせいもあって幼く見える。

しかもわたしには大きな欠点があるし。



「それでって、そんなのもう決まってるじゃない……」

「あんた、またふられたの?」

「はい」

「都合がよすぎるって?」

「はい……」



そう。わたしは尽くしたいというか、貢ぎたいというか、とにかく彼氏のためになにかをしたいたちで。

家に行って掃除・洗濯・料理と家事をするのはもちろん。食事に出かけても奢ってもらうなんて性に合わないし、どちらかとお金は出したい方。

それはさすがに相手の顔を立てるためにしないけど、誰かのため……特に自分にとって大切な人になにもかも捧げてしまいがちなの。



そのせいで、わたしが別れる時は必ず同じようなことを言われてふられる。

都合がよくてつまらない女だから、もしくは重すぎるから。

歴代の彼氏はみんな揃いも揃って浮気していた。



『お前ストーカーみたい』

『一時期は好きだったけど、今はそんなふうに見れない』

『別れようじゃなくて別れます』



そんなことを言って、みんなわたしから離れていった。