尽くしたいと思うのは、





あのあと少しして戻ってきた加地さんも参加して、朝礼は済んだ。社訓宣言をして、諸連絡も共有して無事に終えると、わたしは用意しておいたラミカを片づける。

それが済む頃には、今日は営業のほとんどの人たちは社外に出て行った。



わたしはいつものように、備品のチェック・補充をした。今朝は加地さんと話していたから終わっていなかった作業の続きも。

それらが一区切りついた今、わたしがいるのは普段いる事務室のひとつ上のフロア────資料室。

所狭しと並べられた棚にはぎゅうぎゅうにファイルがつめられている。事務室にある資料とは違い、古いものが多く、長く使われたもの特有の香りがする。



目当てのファイルを探していると、背を向けていた扉が開く音。あまり人のこないところだから不思議に思って振り向くと、そこには佐野さんがいた。



好かれていないことをわかっているせい。少なからず苦手意識があって、心臓がひやりと冷えるような心地がする。

1枚のメモを持っているから、彼女も探しものなんだろう。

そう思いながらぺこりと頭をさげるも、眉をひそめられて素気ない反応。すたすたと別の棚に向かい、わたしと同じように資料を探しはじめた。



気づかれないようにそっと息をもらす。かすかに、重いため息。



わたしの尽くしぎみな性質は、あまり女性に好かれるようなものではない。それは昔からのことだし、佐野さんから向けられるような感情は慣れたもの。

だけど今の環境は、会社の人たちはみんないい人ばかりで、しばらく感じていなかった。それが理由に違いない。

今、わたしがこんなに辛いのは。



以前から嫌われている気はしていたけどここまでじゃなかったのに、どうしてこんなふうになってしまったのかな。



ファイルの背を指で撫でつつファイル名を読む。自然と気分がおちた。



「勘違いしない方がいいわよ」

「……え?」



隣に並んだわけでもなく、姿が見えない。そんな状況で突然投げつけられた言葉に遅れて声を返す。

今この部屋にはふたりだし、わたしに言った……よね。



「加地さんのこと。飲み会で庇われたりして今朝も話してたみたいだけど、勘違いするなって言っているの」