あれは祝日明けの水曜日だった。


その祝日に、ぼくが所属する劇団の公演があって、打ち上げももちろんあって、ぼくはくたくたになっていた。


彼が一人暮らしをする家へ訪問する夕方のぎりぎりまでベッドで引っくり返って、


ようやくのことで酒が抜けたようなありさまだった。



 だから、注意力が散漫になっていたかもしれない。


食事や着替え、トイレや歯磨きの介助でミスを犯したりはしなかった。


でも、いつもと同じ仕事をしながら、いつもと同じだけ集中していたとは、決して言えなかった。


集中していたら、彼の異変に、もっと早く気付けたかもしれないのに。