呟きはやはり湿って落ちる。


来てくれはしないかと、元待ち合わせ場所に元待ち合わせ時間ぴったりに来てみたけど、やっぱりいない。


いまだ眩しい諸々は思い出に成り果て、そしてその思い出にすら全て“元”が付くのだと、思い知らされるほど待ち続けているのに。


つい昨日まで隣で笑っていた人を、こんなにも探しているのに。


“元”彼氏は、私が大事にしたかった人は、私の視界にどうしても、いなくて。


どこかで誰かの視界にあの人はいるのだろう。


きらめく瞳で覗き込んで、甘い笑みを落とすんだろう。


私にしたように。




ねえ、知ってる?


幸せになりたいね、とあなたは口癖のように言ったけど、私は。


いくつかの幸せじゃなくて、幸せそのものが欲しかったの。


あなたと二人で幸せになりたかったの。




イルミネーションが目に染みる。


街は賑やかにさざめいている。


寂しいのは私だけなのだと気づいてしまった。


二人並んで笑い合うはずだった日に、

この、私が呼び込んだみたいな雨空の下で、


一人、来もしない人を探しているのは私だけなのだと。


「……ねえ、何でよ」


なんでよ。


ばか。