「そこは寂しくないって言うとこだよ、酔っ払いのおねーさん」


そんなことを要求されても困る。


私は基本的に自分に素直なのだ。


誤魔化すなんて非生産的なことは望まないで欲しい。


「だって、さみしーものはさみしーんだもん……」

「ったく、しょうがないなあ。ほら、俺んち行くよ」


彼は私の若干呂律の回らない口調にやや面食らったように瞬きをして、ううう、と完璧幼児退行している私の頭を撫でる。


目印になりそうな場所を探しつつ、電話をかけた。


「あーもー、タクシー代、俺のぶんもかかるじゃんか。ほんとに自分の料金は後で払ってよ、まったくもう」


彼のお小言は様式美だ。


言っておかないと体裁がつかない、と思っているのかもしれない。


ぶつぶつ文句を言う彼から嫌な感じはしなくて、私は彼の隣で頬を緩ませていた。