気まずさもあり、そのまま二階へと上がって行く。


声をかけられるかと思ったけれど、お母さんは何も言わずにリビングへと向かって行った。


階段を上がって行くと、いつもと違う匂いが鼻を刺激した。


少し煙たいようなその匂いに、あたしは周囲を見回した。


特に変わった所はない。


なんなんだろう?


そう思いながら歩の部屋のドアを開ける。


その時だった。


一番奥の部屋のドアが少しだけ開いていることに気が付いた。


あの奥の部屋、誰かが使ってたんだ……?


両親はもっぱら一階を使っているから、毎日二階を使うのはあたしだけだった。
それが、今日は開いている。


あたしは部屋に入るのをやめ、奥へと進んでいった。


もしかしたら、ここは海の部屋だったのかもしれない。


海が死んだのは今から3年前だ。


まだ私物が残っていて、整理している途中とか。


そう考えながらそっとドアを開いた。


その時、煙い匂いがきつくなり同時にそれがお香の香りだと気が付いた。