「桐谷さん、最後に女の子の日になったのはいつ?」
いきなり質問を投げてきた。
え、女の子の日?
そりゃ、もちろん、先月、って、え?
先々月は…?
荒らくなる鼓動。
「…最近微熱が続いたり吐き気がしたりしなかった?」
…ある。
「…あります。」
「…酸っぱいものが食べたくなったりは…?」
先生の言葉にポケットから干し梅を出した。
それを見た先生は、
「今日は早退しなさい。
もうお母さんには言ってあるわ。」
「先生は桐谷さんの荷物持ってくるから。」
閉まる保健室の扉。
そう言うのに疎い私でも分かった。
私はベッドに倒れこんで、
目元を腕で覆った。
流れる涙。
悲しいからじゃない、辛いからじゃない。
…嬉しいから。
お腹に手を当てて、
感じるはずもない鼓動を聞きたくて、
手を当てた。
絶対、産む。
1人でもこの子は絶対に産む。
お母さんに反対されても、
絶対に産む。
だけど、
大輝とは別れる。


