そして……



ようやく開演の時間になる。



音楽が流れ、鼓動が最高潮に達する。



徐々にボリュームが大きくなり……

金色のテープが宙を舞い、炎が上がった。

そして、明るくなったステージの上に彼らはいた。





洗練されたその演奏。

クールでかっこよくて。

目が離せなくなり、自然と手を挙げて飛び跳ねたくなる。

彼らはカリスマ。

人々を狂わせる、カリスマ。






そして、どうしても彼が気になる。

ステージの後ろで、Fを支える彼。

深く被ったハットに、少しだけ見える目元。

きゅっと噤んだ口。

その全てが愛しい。

あたしを虜にして離さない。

あたしは瞬く間にその世界に巻き込まれ、涙を流していた。