「痛ってぇな!!」




頰を押さえる賢ちゃんに言ってやる。




「失敗しちゃ、駄目じゃん!

カッコイイFじゃないじゃん」





そうだよ。

賢ちゃんはカッコイイ玄じゃないといけない。

あたしのために、手を抜くのはいけないよ?






「ここで練習していけよ」




悠真が言う。




「俺たち、少し休憩したいし」





賢ちゃんは口を尖らせてあたしたちを見た。

そして、



「てめぇら覚えておけよ!」



悪足掻きに吠える。




「マジでノーミスでやってやる!クソッ……」





賢ちゃんは吐き捨てて、スタジオから出ていった。

あたしは、そんな賢ちゃんの後ろ姿を見ていた。





あたしもね、本当は賢ちゃんといたい。

だけど、あたしの我が儘がFの邪魔になるから、いい子にして我慢するんだ。

楽しみにしてるよ、ライブ。

また、その素敵な演奏であたしを狂わせてね。