「……冗談だよ」 賢ちゃんは決まり悪そうに言った。 「俺がこの話をしたとき、咲良が珍しく酔って眠そうだったから」 ……そうなんだ。 「もしかしたら、覚えてねぇかなーとは思ってた」 そんなことがあったんだ。 あたしはボーカリストだから、喉を痛めるアルコールはほどほどにしている。 だけど、時々賢ちゃんと晩酌をしたりするんだ。 その時間が、唯一賢ちゃんとゆっくり話が出来る、至福の時間だから。