あたしたちは、とあるハウスメーカーのオフィスに来ていた。

言われた通りに玄関をくぐり、階段を上がる。




すると、



「賢一、咲良ちゃん!」



名前を呼ばれた。





顔を上げると、そこに彼は立っていた。




地味なサラリーマンスーツに、少し伸びた黒髪。

銀縁の真面目そうな眼鏡をしている。

あたしは彼をよく知っている。

だけど、こんな真面目そうな彼を見たのは初めてだ。





「蒼、悪ぃな」




賢ちゃんは蒼さんに言う。




そう、ここはサラリーマン蒼さんの勤務先なのだ。