そして……






「咲良。そんなに緊張するなよ」




賢ちゃんは車を運転しながら、あたしに言う。

そんなのんきな賢ちゃんに、



「緊張するに決まってんじゃん!」



言い返した。




だって、これから賢ちゃんの実家にお邪魔するんだよ?

両親に会うんだよ?

あたし、変な女だと思われたらどうしよう。

嫌われたらどうしよう。

交際に反対されたらどうしよう。




そんなことばかり考えて不安になる。






「じゃ、緊張を鎮めるために、運転でもしてみるか?」



「はぁ?」



「咲良、ペーパーだろ?

車乗れたほうが便利だぞ?」



「ふざけないでよ!

こんな高級車、運転出来ない!!

馬鹿なの?」




あたしは叫んでいた。

叫びながら、ふと思った。




いつものやり取りだ。

賢ちゃんと冗談を言ったり、騒ぎあったりして。

こんなやり取りも、すごく楽しい。