賢ちゃん、絶対いい気しないよね。

イラッとしてしまうよね。





そう思ったけど……

膝の上の手に、何かが優しく触れる。

温かくて、ごつごつしてて。

そして、あたしの手を優しく包み込んだ。






あたしの手が熱くなり、発火しそう。

胸が甘い悲鳴を上げ続ける。





賢ちゃん、反則だよ?

今は撮影中なのに。






繋がれたあたしの手と賢ちゃんの手。

カメラからは死角になって見えない。

賢ちゃんはあたしの手を優しく握りながら、クールな顔。

あたしは……賢ちゃんの温もりに体を震わせ、顔を紅潮させたんだ。





ずるい。

あたしを夢中にさせる賢ちゃんは、すごくずるい。








他の共演者の演奏を聴いて、感動した。

アイドルのダンスを目の当たりにして、すごいなぁと思った。

そんなんで、時間は過ぎていく。

あたしは努めて楽しそうに笑い、手を叩く。





そして……

とうとう、あたしたちの出番になったんだ。

賢ちゃんはあたしの手をそっと離す。

頑張れよ、そう言われた気がした。