「茜ちゃん、いい子だよね」




あたしは賢ちゃんに言う。




「あんな子をたぶらかすなんて、賢ちゃん許せない」



「全くだ」




賢ちゃんはさほど気にしていないようで。

電子ドラムを片付けてしまう。

もっと見たかったのに。

もっと感じたかったのに。

普段は大馬鹿なのに、ドラムを叩いているところは想像を絶するほどかっこいい。

だからあたしは言っていた。




「賢ちゃん、もっとやって」



だけどやっぱり、



「見せ物でもねぇんだ」



なんて言う。

だから仕方なく折れてしまうあたし。




「今日は少しだけだけど、賢ちゃんのドラムが見れて良かった」




なんて言って。