光樹がいてもいなくても、歌うのは楽しかった。

そして、あたしの歌声が演奏に乗るのも好きだった。

だが、皮肉にも、光樹の歌声とあたしの歌声が混ざり合うのにも、快感を覚える。

光樹の切ない歌声に、聴き入ってしまう。

ここまでのし上がってきた光樹は、ただ者ではない。

……なんてことは、絶対に言わない。

あたしたちは、仕事上での付き合いだから。

賢ちゃんを悲しませるから。

ただ、光樹の才能については、素直に尊敬している。

予想以上にいい曲になりそうだ。






「よっしゃあ!

仕上がりは上々!!」




スタジオに悠真の声が響いた。