「とにかく、雪奈に言いなさいよね」
「何を?」
「あんたの気持ち。ほら、あそこ、雪奈いるわよ」
花音が指さした先には、優しいブラウンの長い髪が見えた。
スクールバッグを肩にかけて一人きりで下校する雪奈さんの後姿に思わず胸が高鳴る。
「ほら!」
「うわ!」
花音に背中を思い切り押されて、前に数歩よろけてしまう。
情けない僕の声に気づいたのか、雪奈さんは振り返って足を止めた。
それどころか「伊月くん」と僕の名前を不思議そうに呼んだのだ。
鈴の音のような凛とした声で、脳が溶けそうになる。
「どうしたの?」
眼鏡越しのまっすぐな瞳が僕を見据える。
その事実を意識するだけで僕はどこを見たらいいのか分からなくなって、身体が震える。
「え?あ、あー、なんでもないよ!」
あはは、と後ろ髪を掻きながら笑って誤魔化す。
「それならいいんだけど」
雪奈さんはくるりと体の向きを変えると歩き出した。
僕は慌てて追いかけて、その隣を歩く。
「雪奈さん、家、どっちの方?よかったら途中まで送るよ!」
「ありがたいけど、でも私、電車通学だから」
「それなら駅まで!駅まで送るよ!」
押し付けのような懇願に、雪奈さんは目を丸くしてけれど次の瞬間目を細めて笑顔になった。
「ありがとう」
それはまるで祝福のようだった。
たったそれだけの言葉で幸せだと思えるほどには、僕は満たされてしまった。
「何を?」
「あんたの気持ち。ほら、あそこ、雪奈いるわよ」
花音が指さした先には、優しいブラウンの長い髪が見えた。
スクールバッグを肩にかけて一人きりで下校する雪奈さんの後姿に思わず胸が高鳴る。
「ほら!」
「うわ!」
花音に背中を思い切り押されて、前に数歩よろけてしまう。
情けない僕の声に気づいたのか、雪奈さんは振り返って足を止めた。
それどころか「伊月くん」と僕の名前を不思議そうに呼んだのだ。
鈴の音のような凛とした声で、脳が溶けそうになる。
「どうしたの?」
眼鏡越しのまっすぐな瞳が僕を見据える。
その事実を意識するだけで僕はどこを見たらいいのか分からなくなって、身体が震える。
「え?あ、あー、なんでもないよ!」
あはは、と後ろ髪を掻きながら笑って誤魔化す。
「それならいいんだけど」
雪奈さんはくるりと体の向きを変えると歩き出した。
僕は慌てて追いかけて、その隣を歩く。
「雪奈さん、家、どっちの方?よかったら途中まで送るよ!」
「ありがたいけど、でも私、電車通学だから」
「それなら駅まで!駅まで送るよ!」
押し付けのような懇願に、雪奈さんは目を丸くしてけれど次の瞬間目を細めて笑顔になった。
「ありがとう」
それはまるで祝福のようだった。
たったそれだけの言葉で幸せだと思えるほどには、僕は満たされてしまった。


