君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨


「あの雨の日、学校から帰る時、入江に言われたんだ」

「あの日? どの日よ?」

「入江が自殺した日」

「…………」

「『先輩、あたしと相合傘してください』って、生徒玄関で入江に頼まれたんだ」

 あたしは思わず両目を見開いて凱斗を見つめた。

 入江小花さんが自殺した日って、それはあたしと凱斗が相合傘で一緒に帰った日だ。

『雨の日に相合傘で校門を通ったカップルは、永遠に結ばれる』

 凱斗に避けられて悩んでいた入江さんは、思い切ってもう一度、凱斗に告白したんだ。

 うちの学校に伝わる伝説に願いを託して。

 あの直前にそんなことがあったなんて……。

「入江、なんだか思いつめてるみたいだった。必死な顔して、バッグを握る手が小さく震えて指が白くなってた」

 そう言う凱斗の表情も思い詰めているように見えた。

 コップの中に、あの日の自分と入江さんの姿を見ているような目で話し続ける。

「今にも泣きそうな目でさ、瞬きもしないでさ、藁にもすがるような顔して、俺のことジッと見てるんだ。俺、すっかり困っちまって……」

 凱斗の指先に力が込められ、紙コップが小さく歪んだ。