そんなあたしの気持ちを代弁するように、亜里沙が質問を続ける。
「付き合ってた? 過去形ってことは、もう別れてるってこと?」
「付き合い始めてすぐ、俺が3年になって受験体制になって、お互いの時間が噛み合わなくなったんだ。それであっという間に自然消滅みたいな形で終わった」
ほんの短い間の付き合い。そして自然消滅。
どこにでもある、よく聞く小さな恋の始まりと、その終わり。
そんな話を聞きながら、あたしは一生懸命に凱斗の心を読み取ろうとしていた。
以前、付き合っていたふたりが高校で再会した。
そのシーンを想像すると、どうしても焦りのような、ムズムズと落ち着かない気持ちになってしまうのを止められない。
美術準備室であたしは、凱斗から『好きだ』って言われた。
でもその直後に、『忘れてくれ』とも言われてしまった。
こんな宙ぶらりんな告白をされたままのあたしにとって、こんな恋バナ、不安材料以外のなにものでもない。
「それ以来まったく交流はなかったんだけど、今年入江が入学してきて、また同じクラブの後輩になったんだ」
「それがきっかけでまた急接近?」
亜里沙はズバズバ遠慮なく切り込んでいく。


